入院して思った。
トイレが落ち着かない
共同トイレだから音が気になったり人の気配を感じたりで引っ込みがち。
トイレには一応音消し装置が備えてあるけど、
上品で爽やかな流水音など私のお尻には無力である。
音を消してくれるどころか、逆に不協和音を生じている気がする。
でもここは病院。消化器病棟。
消化器疾患を持つ人にとって、排泄は大事なこと
羞恥心など捨ててしまえ(一時的)と自分に言い聞かせて過ごした。
トイレ以外にも、部屋が暑いとか入浴時間足りないとか、辛抱どころが沢山あるけど
退院までの我慢我慢
そんな我慢ばかりの辛い日々が、退院日になると懐かしい。
夜中に鳴ってる医療機器の電子音
朝日が昇り明るくなっていく病室
病棟の独特な匂い
病院の日常的な事が病院外では非日常的な事で、別世界の様だった。
思い出すと当時の感情も甦って心憂い。
退院手続きを終えて院外に出る。
病院の外は人の流れが速い。
活気ある街中にいると社会に戻ってきた感じがする。
面倒な家事だって嬉しく思えるし、
自分のベッドで眠れる幸せを噛みしめる。
退院後はありとあらゆる物や人に感謝した。
手術で腫瘍を切除してもらったから、もう体にがん細胞は無いんだ。
術後は抗がん剤をやるって言われたけど、やらなくて良いと思う。
転移は無かったし、体力も回復してきている。
もう大丈夫、私は生還した、と思っていた。