あすなろ闘病ブログ

大腸がんの闘病生活を書き綴るブログ

79.肝転移再々発の入院⑤【手術】

 

 

5年ぶりの手術の朝

春の季節だった。

ちょうど新入社員研修の時期で、新人看護師さんが手術着と帽子を持ってきた。

あぁ。なんという初々しさだろう。私にもあんな時期があったなぁ

なんて遠い昔を思い出す。

 

片や手元に用意された手術着を見て、時間は確実に流れて手術に向かっている現実と、自分が本当にがん患者なのだと実感する。

 

帽子を被りT字帯を袋をから出して装着。

5年経ってもT字帯の付け方は説明見ずとも覚えているものだなぁと感心した。

 

帽子にT字帯の姿。

今はカーテンを開けられたくない。絶対。

手術着を着てもお腹がスースーするので布団に包まり呼ばれるのを待つ。

 

今回は自分でも不思議なほど緊張や恐怖がない

たぶん、これまでの経験で手術の流れを把握しているのと、最後の手術や抗がん剤から時間が経っているので、治療の辛い記憶が薄れていたのだと思う。

 

 

時間になり手術室に向かう。

手術までのイメージはバッチリ把握している。

エスカレーターで降りて、手術室の前の椅子で待機して、手術室に入ったらもう後は身を任せ麻酔で眠るだけ。

信頼する先生だから不安も無い。

 

コロナ禍で家族面会が出来ないため、一人で淡々と過ごしたから感情的にならずに落ち着いてたのかも。

励まされると涙腺弱くなるタイプだし。

 

けど手術室の前に来たら、またここに来てしまった、と少し感傷的になった。

きっとこの場所は何度訪れても悲しいんだろうな

 

 

手術室に入る

 

手術台に仰向けに寝て、心電図や血圧測定の準備が始まって、いったん横向きになって背中に麻酔の注射を入れて、仰向けに戻って酸素マスクを・・・

イメージ通り、と言いたいとこだったけど

 

硬膜外麻酔の注射が中々入らない

これは精神的にきつかった。

採血でも時間がかかると辛いのに。

 

ここでもう一度言うけど、季節は春。

新入社員と先輩社員が一緒に行動する時期。

 

この時も、若い先生が麻酔注射を行い、ベテラン先生が見守ってたのだけど、ベテラン先生に変わってくれるまでちょっと時間が掛かったかなー。

私ももっと早く意思表示をすれば良かったなと後から思った。

 

薄れてた治療の恐怖心がこの注射で急速によみがえり、心からあふれた。

怖いよー

背後で (針が)入らない ヒソヒソ ・・・って小声で言ってるー

聞こえてるよー怖いよー

泣いたら看護師さんが優しくしてくれて、また泣けてくる

そしたらもう自分が情けなくなって

そんなんなったらさらに、なんでこんな体なんだろう、どんだけ周りに迷惑かける存在なんだろう、てネガティブ感情が止まらくて

涙腺崩壊→優しい言葉→さらに涙腺崩壊→∞ループ

優しさと涙が止まらないよー

 

ベテラン麻酔先生に変わってもらってやっと硬膜外麻酔を終えた

注射が終わった時にはもう汗と涙で汁まみれ

 

予想外の山場を越えて、安堵と疲れがどっと来た。

あーもう早く寝たい。

まだ手術が始まってもいないのに、もう終わった感に満ち満ちており、なぜか清々しささえ感じる。

泣くとスッキリするってやつだろうか。

 

5年ぶりの麻酔。酸素マスクをつけたら苦みが口に広がった記憶。

やっと眠れた。

 

 

緊張感を持つって、大事だね

慣れたという思い込みで気が緩んで、想定外の出来事に気持ちが対処できない。

慣れって怖い。

 

今回の手術で治療していた昔の自分の姿を思い出す。

辛くても頑張った日々の事や、皆に感謝した気持ちは自分の糧になる。

闘病の記憶は私の宝物でもあるのだ。

忘れてはいけない。大切にしよう。

 

「初心忘るべからず」

肝に銘じる